- インボイス制度の経過措置とは
- インボイス制度の経過措置とは、免税事業者などインボイスを発行できない相手からの仕入れでも、消費税相当額の一定割合を仕入税額控除できる期間限定の仕組みです。2026年9月末までは80%、以後は70%・50%・30%と段階的に縮小し、2031年10月に終了します。
インボイスで揉めました。内容は以下の通り。
インボイス関係でクライアントと揉めました。しかし解決したので出来事を共有します。
揉めた内容
・免税事業者は消費税を請求できない
・請求書に消費税表記はしてはいけない結論、上記の通りらしいです。
しかし税理士さんの意見の元、解決しました。この経験を時系列順に紹介します。
免税事業者の僕はインボイス制度でかなり疲弊しました。今後トラブルが起きないように基礎知識と会話内容を共有します。免税事業者の方はこの記事の内容だけ覚えておけば損しないように書いていきます。
✓記事の内容
- インボイスで損しないための知識
- 免税事業者と発注者お互い損しない方法
- 免税事業者がインボイスで揉めない方法:テンプレート
※この記事は2023年11月の体験談です。その後の税制改正で経過措置のスケジュールが変わったため、2026年7月時点の最新情報を記事の後半に追記しました。
免税事業者がインボイス制度で損しないための知識
免税事業者が損しないための知識を専門用語なしで解説します。以下、インボイス登録者(発注側)と免税事業者(受注側)との取引に視点をおいて書いていきます。結論はこの3行です。
- 消費税10%をそのまま請求する→発注側が損をする
- 消費税10%をまるごと値引きする→免税事業者が損をする
- 10%のうち2割だけ値引きする→お互い損しない(計算ツールあり。※経過措置80%の期間中)
なぜそうなるのか、2つのパターンで説明します。
パターン1:消費税10%をそのまま請求する場合→発注側が損
発注側が損する理由
インボイス制度では、インボイス(適格請求書)が無い支払いの消費税分を、発注側が「仕入税額控除」で差し引けなくなりました。免税事業者はインボイスを発行できないので、発注側が免税事業者に払った消費税10%は、税務上は「消費税」ではなく商品代金の一部として扱われます。
僕のイメージは下記の通りです。
- インボイス前:商品代+税。税の分は発注側があとで差し引けるので、実質負担なし
- インボイス後:商品代+税。差し引けないので、税の分がそのまま発注側の負担になる(※経過措置で8割だけ差し引ける)
つまり免税事業者との取引で消費税10%をそのまま払うと、発注側は免税事業者と国に消費税を2回払うような形になります。控除できない分だけ、発注側が損をします。
パターン2:消費税10%をまるごと値引きする場合→免税事業者が損
免税事業者が損して、発注側は得をする理由
逆に消費税10%をまるごと値引きすると、今度は免税事業者だけが損をします。理由は仕入税額控除の経過措置によるものです。言葉は覚えなくてOK。10,000円の商品価格として、具体例を作成します。
- 商品:10,000円の場合
- 税10%を値引き:請求は10,000円(実質この金額が税込になる)
- 税込10,000円のうち消費税は909円。その80%=727円を発注側は控除できる(経過措置)
- 発注側の実質負担額:9,273円
このように免税事業者が消費税分を値引きしたはずなのに、発注側はさらに消費税を控除できるという不思議なことが起きます。またある税理士事務所の記事でも以下のように表記されています。
免税事業者には消費税支払いません!!
経過措置を適用できる期間は合計6年間。当初の3年間(令和5年10月1日から令和8年9月30日まで)は仕入税額相当額の80%、それ以降さらに3年間(令和8年10月1日から令和11年9月30日まで)は50%とされる。顧客A社は横浜税理士法人に支払う月額500,000円の顧問料に10/110(消費税率・地方消費税含)を乗じた消費税相当額45,454円に80%を乗じた36,363円を他の預かった消費税から控除できることになる。(消費税法付則22①23①)
、んんっ?なんだこれは!月額顧問料500,000円としたにも関わらず、A社では払った顧問料は463,637円・仮払消費税相当36,363円となっているではないか。いつの間にか値引きになっている・・・?
※引用中の期間・割合は執筆当時のスケジュールです。2026年の税制改正で変わりました(記事後半の追記で解説しています)。
このように10%値引きすると、発注側の負担額は下がり、免税事業者は損をします。
「損」「得」という表記が正しいかどうかは置いといて、10%の消費税の有無でどちらか一方が負担を負う形になります。では間をとったお互いが損しない方法を学んでいきましょう。
パターン3:免税事業者、発注者お互い損しない方法
上記の2パターンではどちらか一方が負担を負う形でしたが、経過措置の間はお互いが損しないように調整できます。やり方はシンプルで、免税事業者が消費税10%のうち「発注側が控除できない分」だけを値引きします。経過措置80%の期間なら、10%のうち2割の値引きです。
以下のツールを使用してみましょう。当サイトで2026年の税制改正(70%控除)に対応した計算ツールを作りました。
インボイス経過措置 計算ツール(無料・2026年改正対応)
参考: 外部の値引き計算ツール(2026年7月時点では改正前のスケジュールのまま)
このツールは取引金額を入力するだけで、「免税事業者と取引しても、インボイス登録者と取引しても、発注側の負担額が変わらない」値引き後の金額を計算してくれます。簡単なイメージは以下の通り。
- 免税事業者への発注で控除できない余分な金額だけを値引きする
- 発注側の実質負担額が「インボイス登録者との取引」と同じになる
この多少複雑な計算を1発でやってくれるのが上記のツールです。僕はこのツールを使って「インボイス登録者と同じ負担です」と取引先にアピールしています。
お互いが損しないと言いましたが、実質インボイス制度の前よりは免税事業者の収入は減ります。いまは10%の消費税のうち2割の負担ですが、経過措置が縮小するたびに負担は増え、終了すれば10%まるごとの負担(=10%値引きが必須)になります。そのため経過措置が終わればインボイス登録は実質必須になり、税金高すぎ&めんどくさいので僕はその前に海外法人を作ります。
(2026年追記: 海外法人の構想は執筆当時のものです。現在は仙台に拠点を移し、株式会社Web春としてWeb制作・AI開発を行っています)
海外法人やノマドライフに興味がある方はメルマガへどうぞ。これからの事業発展を全て公開しています。
経過措置によって、この先の対応が変わる
経過措置とは簡単に言うと、免税事業者へ発注しても消費税分の一部を控除できる仕組みのことです。
例:10,000円の10%=1,000円。80%控除の期間なら、1,000円の80%=800円を発注側が控除可能。
執筆当時(2023年)のスケジュールは「2026年9月末まで80%→2029年9月末まで50%→終了」の予定でした。この予定が2026年の税制改正で変わっています。最新の内容は次の追記をご覧ください。
【2026年7月追記】経過措置は「2年延長・段階細分化」に変わりました
この記事を書いてから約3年、状況が動いたので追記します(2026年7月時点。国税庁の公表情報と各税理士事務所の解説に基づきます)。
- 80%控除は予定どおり2026年9月30日まで。この追記の時点で残り約2ヶ月半です
- 2026年10月1日からは50%に半減する予定でしたが、令和8年度税制改正で「70%」に緩和されました
- 新しいスケジュール:80%(〜2026年9月)→70%(〜2028年9月)→50%(〜2030年9月)→30%(〜2031年9月)→終了(2031年10月〜)。当初の予定より2年延長です
- ただし同じ免税事業者からの仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外になりました(2026年10月〜)。フリーランスの通常の取引ではまず届かない金額です
これに合わせて、この記事で紹介した「お互い損しない値引き」の幅も変わります。2026年10月からは「10%のうち2割」→「10%のうち3割」の値引きが目安になります(発注側が控除できない分が3割になるため)。
これに合わせて、2026年の改正スケジュールに対応した計算ツールを当サイトで公開しました。税込金額を入れるだけで、控除額・負担増・お互い損しない値引き額まで自動計算できます。→ インボイス経過措置 計算ツール(無料)
また、免税事業者からインボイス登録に切り替えた人向けの「2割特例」(売上の消費税の2割だけ納付でOKの特例)は、個人事業主は2026年分まで。かわりに2027年・2028年分には「3割特例」が新設されています。登録するか迷っている方は、このあたりも判断材料になります。
免税事業者がインボイスで揉めない方法:テンプレート
僕が毎回送っている文章は以下の通り。
- 請求書はこちらでお願いします。こちらの請求書は税理士さん監修の元、契約金額以上の負担が出ないように作成しています。また「消費税」という表記を「技術料」に変換しておりますが合計金額、控除額などは変わらず対応するためのものになります。 計算には下記のツールを使用し、インボイス登録者との取引と負担額が変わらないように商品額を割引し、調整しております。 >https://www.webharu.com/tools/invoice-calculator
上記は税理士さんに言われて作成した文章になります。細かな文脈や言葉使いは各々の温度感で変更しましょう。このなかの、次の一文について。
- また「消費税」という表記を「技術料」に変換しておりますが合計金額、控除額などは変わらず対応するためのものになります。
この部分に関して、Twitterでは多少反対のお声が上がりました。理由は「消費税は請求できる。」「税区分8%、10%を明記した方がいい」と言った内容です。これは僕も概ね賛成しています。しかし今回の取引相手の税理士さんが上記の方法がいいと言っているのでそれに合わせました。
ちなみに「税区分8%、10%を明記した方がいい」という考えはとても正しいです。理由は経過措置の適用条件に「税区分の表記」が含まれているからです。しかしそもそも税金を表記しなければ関係なく経過措置で控除できます。そのための技術料変換です。
またTwitterで得た声から、税理士によってインボイスの解釈に差があるとわかりました。当社はインボイスは少し様子見です。いずれ海外に事業所を移す予定です。興味ある方はメルマガ登録してみてください。たまに配信しています。
(2026年追記: 上記の海外移転の予定は執筆当時のものです。その後方針を変え、現在は株式会社Web春として仙台で法人化しています)
【2026年8月追記】控除80%の期間は2026年9月30日までです
インボイス経過措置の控除割合は2026年10月1日に80%→70%へ切り替わります(令和8年度税制改正)。切り替え後の値引き調整や請求書の書き方は、2026年10月のインボイス経過措置80%→70%切り替え解説記事にまとめています。
よくある質問
免税事業者は消費税を請求できないのですか?
請求自体が禁止されているわけではありません。ただしインボイスが無いと発注側は仕入税額控除が満額できず(経過措置で一部のみ控除可)、10%をそのまま請求すると発注側の負担が増えるため、揉める原因になります。
経過措置はいつまで続きますか?(2026年7月時点)
80%控除は2026年9月30日までです。2026年10月からは税制改正により70%となり、以後50%(〜2030年9月)、30%(〜2031年9月)と段階的に縮小して、2031年10月に終了します。
お互い損しない値引き幅はどれくらいですか?
発注側が控除できない分だけ値引きします。80%控除の間は消費税10%のうち2割、2026年10月からは3割が目安です。当サイトの計算ツール(/tools/invoice-calculator)を使うと取引金額から自動で計算できます。
請求書の消費税を「技術料」と表記しても問題ないのですか?
今回の取引先の税理士の方針に合わせた書き方で、合計金額や控除額が変わらないようにするためのものです。「税区分を明記した方がいい」という意見にも筆者は概ね賛成しており、細かな文面は各自の温度感で調整してください。
免税事業者からインボイス登録した場合の特例はありますか?
「2割特例」(売上の消費税の2割だけ納付すればよい特例)が個人事業主は2026年分まで使えます。かわりに2027年・2028年分には「3割特例」が新設されており、登録するか迷っている方の判断材料になります。

